「良いサービスなのに、なぜか選ばれない」「最後は価格で比べられてしまう」。そんな悩みを抱える経営者や個人事業主の方から、当社はこれまで数多くのご相談をいただいてきました。その背景には、機能や価格だけでは選ばれにくくなった市場の変化があるように思います。
そこで注目されているのが「共感マーケティング」です。この記事では、共感マーケティングとは何かという定義から、従来型との違い、構成する要素、中小企業でも取り組める手順、事例、ステマ規制を含む注意点までを順にお伝えします。
共感マーケティングとは?顧客が「自分ごと」と感じる関係づくり
共感マーケティングの意味
共感マーケティングとは、商品の機能や価格を前面に出すのではなく、顧客の悩みや感情に寄り添い、企業や経営者の想い・価値観に「わかる」と感じてもらうことで選ばれる状態をつくる手法です。売り込むより先に、理解し合う関係を築く点に特徴があります。
「共感型マーケティング」と呼ばれることもありますが、指している内容はほぼ同じと考えてよいでしょう。注目したいのは、共感が一時的な感動で終わらず、信頼や継続的な購買、口コミといった具体的な行動につながっていくところです。
感情を動かすだけでは共感にならない
よく混同されるのが、感動的な演出で心を動かす「エモーショナルマーケティング」です。こちらは感情の起伏をつくることに主眼があります。一方で共感マーケティングは、顧客が自分の経験と重ね合わせ「この人は私をわかってくれる」と感じるかどうかを重視しています。
泣ける広告を見ても、翌日には内容を忘れてしまった経験はないでしょうか。感情が動いただけでは、関係は続きにくいものです。共感は、相手の立場を理解し、自分の言葉で誠実に語るところから生まれると私たちは考えています。


共感マーケティングが今注目される理由
情報があふれ、スペック比較だけでは決めきれない
スマートフォンで検索すれば、似た商品やサービスの情報がいくらでも見つかる時代になりました。機能や価格の差は小さくなり、比較サイトを眺めても決め手が見つからない。そんな状況で、顧客は「誰から買うか」という別の物差しを使い始めているのかもしれません。
情報が多いほど、人は一つひとつを丁寧に読まなくなります。そのなかで記憶に残るのは、数字の羅列より背景のある物語です。当社では、事実を並べるより物語として語ったほうが印象に残りやすいという考えのもと制作を続けてきました。詳しくは「動画効果で記憶に残るストーリー構成」で紹介しています。
購買の判断基準が「モノ」から「ヒト」へ
1,300名超の経営者と体験セッションを重ねる中で、ある共通点が見えてきました。選ばれ続けている方ほど、商品説明より先に「なぜこの仕事をしているのか」を語っているのです。購買の判断基準がモノからヒトへ移り、経営者の人柄や想いが差別化の源泉になりつつあります。
特に中小企業や個人事業主は、大企業のような広告予算を持っていないケースがほとんどでしょう。だからこそ、経営者自身の経験や価値観という「真似されにくい資産」を活かせる共感マーケティングは、規模に関係なく取り組める選択肢だといえます。
従来型マーケティングと共感マーケティングの違い
両者の違いを、目的や発信の軸、顧客との関係性といった観点で比べてみます。どちらが正解というより、これまでの手法に「共感」という軸を加えるイメージで捉えると、自社で取り入れられる場面が見えやすくなるはずです。
従来型マーケティングと共感マーケティングの比較
| 観点 | 従来型マーケティング | 共感マーケティング |
|---|---|---|
| 主な目的 | 認知を広げ、短期的に購入へ導く | 信頼を育て、長く選ばれる関係をつくる |
| 発信の軸 | 機能・価格・キャンペーン | 想い・価値観・ストーリー |
| 顧客との関係 | 企業から顧客への一方向 | 対話を重ねる双方向 |
| 差別化の源泉 | スペックや価格の優位性 | 経営者や企業の人柄・原体験 |
| 成果の現れ方 | 広告出稿量に比例しやすい | 口コミ・紹介・リピートとして積み上がる |
| 向いている場面 | 新商品の告知、比較検討層への訴求 | 価格競争から抜け出したいとき |
※出典:当社の動画制作・セミナー現場での知見をもとに整理(2026年)
表を見ると、共感マーケティングは即効性より積み上げ型の性質を持つことがわかります。当社自身も広告費をかけずに累計1.8億円の実績を重ねてきましたが、それは発信の一つひとつが紹介や口コミにつながった結果だと受け止めています。
共感マーケティングを形づくる4つの要素
ストーリー|失敗や挫折も含めた「変化の物語」
共感の入り口になりやすいのが、ストーリーです。完璧な実績だけを並べるより、うまくいかなかった時期や、そこからどう考えを変えたのかを語るほうが、読み手は自分の姿を重ねやすくなります。人は、同じ悩みを越えてきた人の話に耳を傾けるものです。
失敗談の見せ方は「失敗談を武器にした自己紹介で印象に残る方法」でも詳しく触れました。失敗、学び、行動の変化、いまの姿という流れで組み立てると、押し付けがましくない物語になりやすいという声をいただきます。
家族への申し訳なさ
新たな気づきと発見
新しいアプローチを実践
「同じ道を歩んだ先輩」へ
価値観|「なぜこの仕事をしているのか」を言葉にする
二つ目の要素は、価値観の言語化です。私たちが大切にしているのは「人は、理解し合うことで幸せになれる」という考え方でした。この言葉の背景には、創業者が若い頃に家族との関係に悩み、ある出来事をきっかけに「理解」の大切さに気づいたという原体験があります。
価値観は、立派な理念である必要はありません。仕事で譲れないこと、お客様に絶対にしないと決めていること。そうした日々の判断基準を言葉にするだけで、発信に一貫性が生まれます。個人ブランディングの土台にもなる部分です。
顧客の声|第三者の実感が信頼を補強する
自分で語る想いに顧客の実感が加わると、説得力は大きく変わります。ただし喜びの声をそのまま並べるだけでは、広告のように見えてしまうかもしれません。お客様がどんな悩みを抱え、何をきっかけに変わったのか。その過程ごと伝えると、読み手の共感につながります。
当社のサイトでも、心理カウンセラーの方へのインタビューのように、導入前の迷いから語っていただく形式を大切にしてきました。なお、顧客の声を掲載するときは、後半で触れるステマ規制にも気を配っておくと安心でしょう。
双方向性|発信を「対話」に変える
最後の要素が双方向性です。一方的に発信するだけでは、共感は深まりにくいものです。SNSのコメントに丁寧に返す、セミナーで参加者の質問に答える、アンケートで意見を聞く。こうした小さなやり取りの積み重ねが「この会社は話を聞いてくれる」という実感を生みます。
当社がこれまで全国35ヶ所でセミナーを開催してきたのも、直接顔を合わせて対話する場を大切にしたいからでした。オンラインでの発信方法については、「今すぐ始める個人のSNSマーケティング」の記事でも紹介しています。


中小企業・個人事業主が共感マーケティングを始める手順
では、実際に何から手をつければよいのでしょうか。大がかりな予算や専任チームがなくても始められる流れを、当社がセミナーや体験セッションでお伝えしている内容をもとに紹介します。一度に全部やろうとせず、できるところから試す形でも十分です。


顧客が口に出せない悩みを書き出す
最初に取り組みたいのが、顧客理解です。年齢や職業といった属性だけでなく、「本当は誰にも言えずに困っていること」を想像して書き出してみます。過去の相談メールや商談メモを見返すと、お客様が繰り返し使っている言葉が見つかることも少なくありません。
その言葉は、そのまま発信の見出しや冒頭文に活かせます。顧客自身の言葉で悩みを表現すると「まさに私のことだ」と感じてもらいやすくなるためです。相手の心の動きをつかむヒントは、人心掌握が上手い人の特徴をまとめた記事も参考になるかもしれません。
自分の原体験と価値観を棚卸しする
次に、自社や経営者自身の物語を棚卸しします。事業を始めたきっかけ、いちばん苦しかった時期、そこから学んだこと。顧客の悩みと重なる経験が一つでも見つかれば、それが共感の接点になります。紙に3つほど書き出してみるだけでも、意外な気づきがあるはずです。
自分の強みは、自分では見えにくいものです。当社の体験セッションでも、ご本人が「たいした話ではない」と思っていた経験に、周りの参加者が強く心を動かされる場面を何度も見てきました。客観的に振り返りたいときは3分でわかる自己ブランディングチェックを使う方法もあります。
伝わる形に編集して発信する
素材がそろったら、次は相手に届く形への編集です。文章ならブログやSNS、声や表情まで伝えたいなら動画という選択肢があります。動画は表情や声まで伝えられるため文章だけより多くの情報を届けられ、ストーリー動画の視聴維持率は30〜50%というデータも得られました。
とはいえ、最初から完璧なコンテンツを目指す必要はないと考えています。同じ価値観を、ブログ、SNS、名刺、商談資料など複数の接点で繰り返し伝えていくこと。表現がぶれないほうが、受け手の中に「この人らしさ」が少しずつ積み重なっていきます。
反応を拾い、対話を続ける
発信したら、反応を観察します。どの投稿にコメントが集まったか、商談でどの話に相手が身を乗り出したか。数字だけでなく、お客様の言葉そのものを記録していくと、次に語るべきテーマが自然と見えてきます。販売後のフォローも、関係を深める大切な接点です。
一度きりの取引を継続につなげる工夫は、個人事業主のリピーターを増やす低コスト戦略で詳しく紹介しました。発信と対話を行き来しながら少しずつ育てていくものだと捉えると、気持ちも楽になるのではないでしょうか。


共感マーケティングの事例
ここからは、共感マーケティングの考え方が形になっている事例を紹介します。公開情報で確認できる企業の取り組みと、当社のクライアントや当社自身の事例を取り上げました。事業の規模は違っても、自社に置き換えて応用できるヒントが見つかるはずです。
無印良品|顧客の声を商品づくりにつなげる「IDEA PARK」
無印良品は、お客様の声をものづくりにつなげる仕組みを強化するため、2014年に「くらしの良品研究所」内へ「IDEA PARK」を設置しました。同社によると、寄せられたリクエストは2年間で10,000件を超え、その声をもとに200点以上の商品が見直されたそうです(出典:無印良品 くらしの良品研究所)。
この事例の特徴は、双方向性を「仕組み」にしている点です。顧客は自分の意見が商品に反映される過程を見られるため、ブランドへの愛着が育ちやすくなります。小さな事業者でも、アンケートの声をサービス改善に活かし、その経緯を発信することは十分にできるでしょう。
当社クライアント|経営者の物語を動画にして売上につなげた例
当社のクライアントには、経営者の失敗や挫折を含むストーリーを感動ムービー®にし、導入後10日で300万円の売上を立てた企業があります。また、動画を活用した1回のプロモーションで500万円を超えた事例もありました。どちらも、商品説明より先に経営者の想いを届けていました。
もちろん、同じ結果がすべての方に出るわけではありません。ただ「この人から買いたい」と思ってもらえるきっかけを先につくると、その後の商談が売り込みではなく相談に変わっていく。そうした変化を、クライアントから聞かせていただくことが多くあります。
当社自身|広告費をかけずに積み重ねた1.8億円
私たち自身も、共感を軸に歩んできた会社です。創業時、周囲からは「無謀だ」という声もありました。背水の陣で始めた事業でしたが、1ヶ月後には160万円の売上を達成。そこから広告費をかけずに、累計で1.8億円の実績を積み重ねてきました。
支えになったのは、セミナーでの出会いや、動画を見た方からの紹介でした。世界20カ国・600社以上で導入されている「ほめ育」の開発者、原邦雄氏からは「人生でNo.1の体験」という評価をいただいています。理解し合える関係を、一つずつ増やしてきた結果だと考えています。
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共感マーケティングの注意点|やらせ・ステマ規制に触れないために
つくられた共感は、いずれ見抜かれる
共感を得たいあまり、実際にはない苦労話を盛ったり、流行の社会課題に表面的に乗ったりするのは逆効果になりかねません。発信内容と実際のサービスや対応に食い違いがあれば、顧客はすぐに違和感を覚えます。等身大の経験を誠実に語ることが、何よりの土台になります。
顧客の声や口コミ依頼はステマ規制を確認する
2023年10月1日から、広告であることを隠した宣伝、いわゆるステルスマーケティングは景品表示法の不当表示として規制対象になりました(出典:消費者庁、2023年)。事業者が依頼して書いてもらった口コミを、第三者の自発的な感想のように見せる表示は、規制に触れるおそれがあります。
架空の体験談を載せる「やらせ」は論外として、謝礼を渡したレビューや紹介を依頼したSNS投稿には「広告」「PR」と明示する、顧客の声は本人の許可を得て事実のまま載せる、といった配慮が求められます。判断に迷うときは、消費者庁のQ&Aを確認しておくと安心です。
売り込みが透けると、共感は離れていく
共感を入り口にしながら、結局はすぐに購入を迫る。そんな流れは、読み手に「共感は売るための道具だったのか」と感じさせてしまいます。発信の大半は相手に役立つ情報や自分の考えにあて、商品の案内は必要とする人に届く場所へ置く。そんな配分も一つの方法です。
共感マーケティングに関するよくある質問
Q. 共感マーケティングとエモーショナルマーケティングは同じものですか?
重なる部分はありますが、力点が異なります。エモーショナルマーケティングは感動や驚きといった感情を動かすことに主眼を置き、共感マーケティングは顧客が自分の経験と重ねて「わかる」と感じ、信頼関係が続くことを重視します。感情を動かす表現は、共感を生む手段の一つです。
Q. BtoBや士業でも共感マーケティングは使えますか?
使えると考えています。BtoBでも、最終的に判断するのは人だからです。士業や専門家は専門性が横並びに見えやすいぶん、「なぜこの分野を選んだのか」を伝えることが選ばれる理由になります。新規開拓での応用は「感動」を活用した心理的アプローチ法の記事も参考になるはずです。
Q. 成果が出るまでにどれくらいかかりますか?
業種や発信の頻度によって大きく異なるため、一概にはいえません。共感マーケティングは広告のような即効性より、信頼が口コミや紹介として積み上がる性質を持っています。まずは数か月単位で発信と対話を続け、問い合わせ時の言葉や商談の質の変化を見ていくのが現実的ではないでしょうか。
Q. 動画がないと共感マーケティングはできませんか?
動画がなくても始められます。ブログやSNSの文章、対面での自己紹介など、ストーリーを伝える手段はさまざまです。一方で、声のトーンや表情、情景まで伝えたい場合には、動画が有力な選択肢になります。伝え方の基本は「相手に分かりやすく伝える方法」でも紹介しています。


理解し合う関係から、選ばれる理由が生まれる
共感マーケティングとは、機能や価格の競争から一歩離れ、顧客の悩みに寄り添いながら、自社の想いや価値観を誠実に届けていく取り組みです。ストーリー、価値観、顧客の声、双方向性という4つの要素は、規模の小さな事業者ほど活かしやすいものかもしれません。
私たち感動ムービー®は、これまで173本の経営者ストーリーを形にしてきました。「自分の物語をどう伝えればいいかわからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。あなたの事業には、まだ語られていないどんな物語が眠っているでしょうか?
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